本研究の目的は、子ども・子育て支援事業計画および次世代育成支援行動計画記載事業の利用者評価を自治体で定着させるための、1)利用者評価ツールおよび評価方法の改良を行い、2)定期的かつ計画的に利用者評価を実施できる体制の構築をし、さらに、3)評価の結果を上記計画の進捗状況の確認および評価に活用し、利用者評価をPDCAサイクルに組み込む仕組みを作ることである。
地域子ども・子育て支援は、乳幼児期から学齢期に至る子育て家庭にとって不可欠なものであるが、最も身近な利用者の手によって実施される利用者評価が充分に行われ、市町村レベルでひろく定着しているとは言い難い。そこで、本研究では自治体が安定した利用者評価が行える評価体制の構築および、PDCAサイクルに利用者評価結果を活かす仕組みを作り、その普及を目指す。
2018年度は利用者評価実施状況並びに実施体制等に関する実態調査の実施に向けての準備のために、1)A県内のすべての自治体の子ども・子育て支援事業計画の内容調査、2)利用者評価に関する文献研究、3)実態調査実施に向けた質問紙の作成を行った。
2019年度は利用者評価実施状況並びに実施体制等に関する実態調査を実施を行った。市町村(特別区含む)全数(1742自治体)の子ども・子育て支援事業計画を担当している部局の責任者1名を対象に、自記式質問紙調査を行った。質問項目については、自治体の基礎情報、子ども・子育て支援事業計画と一体的に計画策定している計画、計画策定・推進・評価の部局、利用者評価の実施有無・頻度等をたずねた上で、利用者評価に関する詳細な現状や必要度についてたずねた。また今後のヒアリング調査への協力有無についてもたずねた。
2020年度は実態調査から詳細な分析を行い、学会報告を行った。利用者評価をPDCAサイクルに組み込む仕組みづくりつながるよう研究を進めた。
近年は子どもや家庭に関するさまざまな法が新たに整備され、それに基づく計画も本計画と合わせて策定している自治体も多い。現在、子ども・子育て支援に関するさまざまな事業等の充実とともに、ますますその質が問われている。質の向上には、各自治体が計画のPDCAサイクルの中で、進行管理や自己評価を行うとともに、地域の住民や利用者、子どもからの意見や評価を得ることも欠かせない。
本研究では、全国1741市町村(特別区含む)の本計画等の評価に関する仕組みや内容を明らかにするとともに、地域の住民や利用者等に対し実施する利用者評価の実態把握を目的とする。今後、本研究の結果を本計画等のPDCAサイクルに利用者評価を盛り込む仕組みや、評価システムづくりに活かしていく。なお、今回の発表では記述統計結果の一部について報告した。本発表は、平成28年度-令和2年度科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金 基盤研究(C)一般 課題番号:16K04223 研究代表者:小野セレスタ摩耶)『子ども・子育て支援事業計画と次世代育成支援行動計画の利用者評価に関する開発的研究』の一部である。